いきなり人気俳優の婚約者になりました。~絶対秘密の同居生活~
「……好きじゃ…」
好きじゃない。
好きじゃない、って、あの頃何度自分に言い聞かせたんだろう。
中学を卒業して、全く会わなくなって、もう完全に忘れられたと思ってたのに…再び会ってしまえば、顔を見て、言葉を交わしたら。
どうしようもなく、
「…好きじゃない…よ」
一瞬で引き戻されるんだ。
あの頃、采斗のことが好きだった私に。
「…柏木、嘘下手すぎ」
「…だって…ありえないから」
「ありえない?」
「向こうが私のこと好きになるはずないし…私なんかが好きになっていい相手じゃないの。偶然幼なじみってだけで、本当ならそれすら許されないくらい。
私とは全然違う、すごい人だから。だからもう本当に、忘れ…」
「まっったく、意味わかんねーな」
一岡が焦れたように、少し乱暴に箸をおいた。
「許されないって誰に。
向こうが好きになるはずないとか、なんでだよ。勝手に決めんな。その幼なじみヤローがそう言ったのか?」
「…それは…言ってない…でも」
「だったら忘れる前にやることがあるんじゃねーの」
一岡がまっすぐ、私を見る。
「それともその幼なじみヤローは、お前の気持ちも受け止められないような、そんなヘタレな男なわけ?」