いきなり人気俳優の婚約者になりました。~絶対秘密の同居生活~
「優里、悪い子ー」
鞄を持って慌ただしく玄関に向かう私の後ろを、拗ねた様子の采斗がついてくる。
「俺から逃げるなんて…」
「にっ逃げたわけじゃないよ…!」
逃げたけど!
「そろそろ出ないと遅刻しちゃうし!」
でも、これも本当。
「ふーん…」
「あ、采斗もそろそろ佐保さん来る時間でしょ?今日も稽古頑張ってね!舞台の初日公演観に行くから!」
「え…来るの?」
「もちろん!気合入れてチケット取っちゃった!」
「……わざわざ買わなくても言ってくれればあげたのに」
「そんなわけにはいかないよー!ちゃんと自分のお金でチケット買いたいもん」
「…そっか」
てっきり喜んでくれると思ったのに。
予想に反して采斗は、複雑そうな顔をしていた。
「…私が見に行くの…嫌だった?」
「え…いや違う、そんなことない。嬉しいよ」
私の言葉に采斗がはっとしたように笑顔を作る。
「…ただ、共演者が…」
「共演者?」
「…乙藤竜生も、出るんだよね」