私があなたを殺してあげる

「お疲れ様でした!」

 午前5時。浅尾くんは意外と早く、仕事を終えて店から出て来た。夜中の勤務にしては早い仕事上がりだ。


「こらぁ~、浅尾ぉぉぉ! ちょっと来―い!」

 浅尾くんを待つこと二時間、私ビールを四缶開け、上機嫌に酔っていた。

「あれ? 本当にいた。何をやってるんですか?」

 浅尾くんはそう言いながら歩み寄って来る。

「悪いか? おまえを待ってたんら!」

「俺を?」

「そうら! おい浅尾! おまえ、さっき私を見て鼻で笑ったろぉ? 馬鹿にしたらろう?」

 私は酔っていて、呂律がまわっていない。


「いや、馬鹿になんてしてませんよ」

「いや、した!」

 私は浅尾くんの胸倉を掴むとぐっと引き寄せ、あと数センチで唇が触れるんじゃないかというところまで近づいた。


「ちょっと、落ち着いてください」

 浅尾くんはそう言って私の手を掴んだ時、「冷たっ!」と、言って目を丸くした。そして「めっちゃ冷たいじゃないですか? 何やってるんですか?」と、言葉を続けた。


「何って、おまえを待ってらんだ!」

「待つにもこんな寒いところで・・・ 馬鹿じゃないんですか?」

「馬鹿だぁ?」

 すると浅尾くんは自分の上着を脱ぎ、私にかけてくれた。


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