私があなたを殺してあげる

 私は仕事終わりにドラッグストアへ、智明に会いに行った。

「月、綺麗やな?」

 ベンチでボーっと月を見ている私に、休憩に入った智明が話し掛けて来た。


「智明、あなた私より年上なんだってね? 私ずっと二十歳過ぎくらいだと思ってたよ」

「そうなん? だから時々、杏子の話に違和感があったんか。俺って、そんな若く見えるか?」

「しかも働いてたんやね? 実家の酒屋さんで。私はずっと学生やと思ってた」

 私は智明の質問の上から被せるように言葉を続けた。


「学生? 働いてる男感なかった? まだまだ頼りなさそうってことか~」

「なんで? なんでそこまで頑張るの? 昼も夜も働いて、なんでそんなに頑張るの? 家に借金があるから?」

「聞いたんか?」

 その話をすると、智明の顔から笑顔が消えた。


「それだけ聞いた。借金があるから働いてるって・・・」

「そうか・・・」

「ねぇ? なんで? いくら借金があるからって、そんなに働いたら体壊しちゃうよ?」

「そやな・・・ でも、それでも働かなあかんねん」

「なんで? なんで智明がそこまでするの?」

「母さんを守らないと」


 そう言ってやさしい表情を見せた智明に、私はそれ以上、何も言えなかった。母親のことを出されるともう何も言えない。


 そして浅尾さんのこと、お店に飲みに来ていること、不倫相手は加寿実さんということ、私は言えなかった。父親を守ろうとしたわけじゃない、頑張っている智明を思うと、苦しめるようなことは言えなかったんだ。




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