悪女は恋人たちを手放した。恋人たちはそれを許さなかった。
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「彼氏できた?もしくは恋?」
「え?」
出勤後、いつものようにゆるゆるとデスクワークをしていると隣で同じように仕事をしていた5歳上の女の先輩、カオリさんが私に興味深そうに声をかけてきたので不思議に思いながらカオリさんを見た。
カオリさんは新人の時からお世話になっている方で仕事でもプライベートでも仲良くさせてもらっている。
非常に姉御肌な美人さんだ。
私も外見は強気美女なので2人で並んで歩く姿は圧巻らしく、逆に近寄り難いらしい。
そういう噂を何度も耳にしたことがある。
「どうしたんですか?急に」
質問の意図がわからず私はカオリさんに首を傾げる。
「あらら?自覚なし?ここ数ヶ月かな、ずっと思ってたんだけどエマちゃんすっごく綺麗になったよ?」
「へ?」
「しかも絶対男が絡んでいると思うんだよね」
「えぇ?」
意地悪く笑うカオリさんに私は表情を歪める。
一体どこからそんな根拠のない自信が湧くのか。
「カオリさん…。カオリさんも私のプライベートはよく知ってますよね?恋人も居ませんし、そう言った浮いた話なんてものも残念ながらありませんよ」
軽く私はカオリさんに笑う。
浮いた話なんてなくても夢の中では恋人が、しかも超美しい恋人が3人もいるからいいのだ。
私はそれだけで十分満たされている。
「ええー。本当に?私そういうのは見る目あるんだよ?」
「本当ですよ…ん?」
「ん!なになに?」
私の返事を聞いて残念そうにしていたカオリさんだったが、私が考える素振りを見せると今度は期待の目で私を見つめてきた。