悪女は恋人たちを手放した。恋人たちはそれを許さなかった。
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「それでその時彼はこう言ったんだよ「今度こそ絶対大丈夫」だって」
「ふふっ、何それ。不安しかないじゃない」
リアムが甘い笑顔を浮かべたままそれはもうおかしな話を面白おかしく私に話す。私はそれが本当におかしくてお腹を抱えて笑い続けていた。
リアムは隣国の王子様であり、外交官だ。何でもできる彼の体験談は山の様にあり、何より外交に必要な話術に長けている。
リアムの話は本当に面白くて飽きない。
ずっと私はリアムの話に夢中になっていた。
「あぁ、ははっ、笑い疲れちゃったわ。休憩よ、休憩」
「え?もう?まだあるよ?」
「ダ、ダメよ。死んじゃうわ」
「死んでも大丈夫だよ。僕がずっと側にいる」
「嫌よ。死にたくはないもの」
笑いっぱなしだったので私はさすがに体力がなくなり休憩をリアムに申し出るとリアムは残念にそうに私を見つめた。
そんな甘い顔をしてもダメなものはダメよ。このままでは笑い死んでしまう。
まぁ、明日、腹筋が死ぬことは決定してしまったけど。
「リアム。私はアナタの話が一番好きよ」
「いつもそう言ってくれるね。僕はエマの一番?」
「ええ。一番よ。アナタの話が一番楽しいわ」
「そっか」
残念そうに肩を落とすリアムに私は微笑む。
するとリアムはいつものように甘い笑みを私に見せて、最後にほんの少しだけ嬉しそうに微笑んだ。