悪女は恋人たちを手放した。恋人たちはそれを許さなかった。
3.ルークと見る宝石は何よりも美しい
ルークと私
また今日も夢の中で私の意識が覚醒する。
「ルーク!」
覚醒した私は勢いよくどこかの扉をルークの名前を呼びながら開けている最中だった。
「…っ!」
とんでもないタイミングでの覚醒に私自身驚いてしまう。
私の目の前に広がっているのはこの国1番の情報量を誇る、私の宮殿の中にある図書館だ。
この図書館には王族のみが知る秘密の情報もある為、王族のみが利用を許されているのだが、例外も何人かいる。
その1人が今、図書館の中で本を読んでいたルークだった。
「エマ?どうしたの?」
「…、あ、えっと」
ルークの名前を呼ぶだけ呼んで一向に図書館に入ろうとしない私を不思議そうにルークが見つめる。
だが、私自身、今自分の身に何が起こっているのかわからないので上手く対応ができない。
私は今何をしにここへ来たのだろうか。
「もしかしてもう宝石の準備ができたの?」
「!そうよ」
困っていると大きな垂れ目をキラキラ輝かせてルークが私を見てきたので私はすぐにそれに答えた。
そして私は後ろに控えているメイドをルークの死角になる場所へ呼ぶ。
「…宝石の準備は?」
「もちろん整っております。エマ様のお部屋に申しつけられた通りに特別な宝石の数々をセット済みです」
「そう」
ルークにバレないように小さな声でメイドに確認すれば簡潔に私の欲しい答えがメイドから返って来た。
これで今の状況がなんとなくわかった。
話の流れは全くわからないが、知識大好きなルークの為に貴族や王族のみしか扱えない宝石を準備させたのだろう。そしてそれをルークに見せると私は約束していた。
「エマありがとう!でももう少しこの本を読みたいんだ。少し待ってもらえるかな?」
「ええ、構わないわ」
メイドとの話を終えた頃にルークが首を傾げて心配そうに私を見てきたので私は笑顔でそれを許した。
メイドを図書館の外へ待機させ、私も図書館の中へ入る。