悪女は恋人たちを手放した。恋人たちはそれを許さなかった。
ルークは一度本を読み出すとなかなか読み終わらない。
なので私はルークを待つ間、暇を潰す為の本を選び、ルークの元へ向かう。
「…」
難しそうな本を夢中になって読むルークの目の前の椅子に私は座る。私の座った椅子はルークが座っている椅子とは間に机がある為、距離が空いていた。普段なら絶対に距離の近いルークの隣の椅子に座るのだが、この席の方がルークの顔をじっくり見ながら本も楽しめるので私はこっちの椅子を選んだ。
本を読むふりをしてルークを盗み見る。
可愛らしい顔が新しい知識を得て、歓喜に染まっているのがわかる。大きな垂れ目はずっとキラキラ輝いており、美しい。
見ていて飽きない姿だった。
「…」
バレないように邪魔にならないようにルーク鑑賞を楽しんでいた私だったが私の視線に気がついたようでルークはその愛らしい顔に不満の色を浮かべる。
「?」
何故、そのような顔をしているのだろうか?ルークならこのくらいの視線で気が散るとは思えないが。
不思議に思ってルークを見つめ続けていると、ルークは読んでいた本を閉じて私の元へやって来た。
「何でそこに座るの?側にいてよ」
甘えるような声を出して私の隣にルークが座る。
「こっち来て?一緒に座ろ?」
そして上目遣いで私を見つめながら手招きをされた。
「ふふ、可愛らしいわね、ルーク」
「一緒にいたいんだもん。エマもでしょ?」
「もちろんよ」
あまりにも可愛いらしいルークの姿に満たされていると、ルークはそんな私に可愛らしく微笑んだ。
そんなルークの足の間に私は座る。
後ろからルークに抱き締められる形になった私は目の前にはルークが読んでいる本があるし、ルークは後ろにいるしで先程とは全く違う状況になる。
正直ルークに抱き締められているだけで先程よりもつまらない状況だがルークの可愛らしさに免じてこの状況を許すことにした。