悪女は恋人たちを手放した。恋人たちはそれを許さなかった。
恋人たちに早く会いたい
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定時まであと30分。
私は今日も残業を一切せず、飲み会にも参加せず、真っ直ぐ家に帰れるように準備を始めた。
全てはすぐ寝て、夢の中の恋人たちに会う為に。
うちの会社はホワイトだし、ゆるいので社員はみんなこの時間にはこの後何をするのか話し始める。
真っ直ぐ帰ろうとする私のような人、これから飲み会をするので人を集めたり、行きたいと声をあげたりする人。
公開された映画を観に行く、本を買いに行くなど、本当に様々なこの後の予定がこのオフィス内を飛び交う。
「ねぇ、エマちゃん?今日どう?3人の恋人たちとの話が聞きたいなぁ」
「ちょっとカオリさん。その言い方だと私が随分遊んでいる印象になるじゃないですか」
帰りの準備を整えていると隣からニヤニヤ笑いながらカオリさんが私に声をかけてきたので私はそれに対して嫌そうな顔をした。
しかし時はすでに遅くカオリさんの言葉を聞いたオフィス内がざわざわと一つの話題で騒がしくなる。
「え?エマさん3人も恋人がいるの?」
「絶世の美女だからなぁ。いてもおかしくない」
「いやいや。美人でもやっていいことと悪いことがあるでしょ」
全て私の噂だ。
みんな興味深そうにこちらを見ている。