悪女は恋人たちを手放した。恋人たちはそれを許さなかった。
「…リアムは私から解放されることを望んでいないの?」
「そうだよ。僕はエマを愛しているからね。エマに囚われ続けたい。これからも永遠に」
恐る恐るリアムの意思をもう一度確認する。
するとリアムは本当に愛おしそうに私に微笑んだ。
もう、手遅れだ。
リアムは狂っている。私がいる限り彼は幸せになれない。
そんなのは嫌だ。
この状況を改善する為にはリアムの前から私が消えて冷静さを取り戻させなければならないだろう。
この調子なら最初こそ大変かもしれないがやがて時間が今の狂った状況に気づかせ、治してくれる。
ここはリアムの気持ちを受け取ったフリをしてその後はリアムにバレないようにこっそり身を隠そう。
「エマ。だから僕は必ずエマを見つけ出す。そしてもう二度と逃げられないように今度は僕がエマを監禁するよ。エマの為に大きな檻を用意したんだ」
「え?」
甘くとろけるような笑みを浮かべるリアムの瞳に光はない。
リアムの言っていることの意味がわからず、私は表情を歪めた。
だけどどうしてだろう。
何の脈略もなく言われたことなのに何か引っかかる。
だが、それが何なのか私にはわからない。
「それで?エマは僕を解放するのかな?」
「…しないわ」
「ふふ、それはよかった。嬉しいよ、僕のエマ」
ごちゃごちゃの頭の中を何とか整理しようと奮闘しているとリアムが私に微笑んできたので私はぎこちなくだがそれに答えた。
するとリアムはいつものように甘い笑顔を私に向けた。