悪女は恋人たちを手放した。恋人たちはそれを許さなかった。
私はルークがソファに座ったことを確認すると重たい口を開いた。
「ルーク」
「ん?」
「今までの非礼を詫びさせて欲しいの。本当にごめんなさい」
「…え」
ルークを真っ直ぐ見つめたまま私は心を込めて真剣な表情でルークに謝罪した。
そんな私を見てルークは驚いたように固まった。この私が謝罪するとは夢にも思っていなかったのだろう。
「アナタの自由を奪って愛を強要させた。本当にごめんなさい。今日をもってルークを私から解放するわ」
未だに言葉が出ない様子のルークに私は再び、謝罪をし、ルークを解放する、と言うルークにとっての吉報を伝える。
すると目の前で私を見つめ続けていたルークの大きな瞳から一粒の涙がこぼれ落ちた。
「…え」
突然のことに今度は私が驚いた。
涙の理由は私から解放される安堵からだろうか。そうであって欲しい。
「…また僕を捨てるんだね、エマ」
私を見つめるルークがおかしそうに首を傾げてこちらを見つめる。目の奥が笑っていないその表情は先程見たリアムと同じものに見えた。
捨てる?どうしてそんな言い方に?
またとは?
リアムにも同じようなことを言われた。
その言葉が引っかかる。
そして悪い予感がするのだ。リアムの時と一緒だと。