悪女は恋人たちを手放した。恋人たちはそれを許さなかった。
「…ルーク、アナタは私みたいな悪女からやっと解放されるのよ?捨てられるんじゃない。解放されるの。恨んでいるんでしょう?私のこと。本当のことを言っても私はアナタに危害を加えるつもりはないわ」
藁にもすがるような思いで言葉を吐く。表面上だけでも冷静さを保っていたいがなかなか上手くできず変な笑みを浮かべ私はルークを見つめた。
お願い。ルーク。私を〝恨んでいる〟と言って。
アナタはまだ私に壊されて狂っていないこと証明して。
「…もう恨んでいないよ」
「…っ」
ルークがほろほろと綺麗な涙を流しながらリアムと同じように仄暗い笑みを私に向けてきたので私は思わず言葉を失った。その姿があまりにも先程見ていたリアムと被り頭が真っ白になる。
「な、にを言っているの」
否定しなければ。ゆっくりと何とか動かした脳がそう私に命令する。
「ルーク、アナタは私を恨んでいるの。その思いは消えないわ、絶対に」
私は何とかルークの言葉を否定した。
「何故そう言い切れるの?僕は確かにエマを恨んでいたよ。エマを恨んで、エマを騙して、ここからいつか逃げるつもりだった」
ルークが愛らしいながらも真剣な眼差しで私を射抜く。
「でも逃げられなかった。僕はアナタに愛されてしまったから。アナタが僕に世界を見せてくれたから」
「…」
訳がわからない。ルークの言葉に私はただ困惑する。
だがルークがリアムと同じなのだということがわかってしまった。