蜜甘同居こじらせ中 その後 短編集
「今、俺の頭の中に。
すっげー良いメロディが、浮かんでるんだ」
「今すぐ、ノートに書かなきゃだね」
綺月君の腕から
抜け出そうと思ったのに
私を閉じ込めるように、
綺月君は抱きしめる腕に、力を込めた。
「綺月君、メロディ忘れちゃうよ」
「大丈夫。心美が覚えててくれれば」
「え?」
「今から、俺が歌うから」
「……うん」
「心美の脳に刻まれるまで、
ずっと歌い続けるから」
綺月君の温もりに包まれたまま
私の耳に届く、甘い歌声。
何度も繰り返されるメロディは、
私の血液に溶かされ。
体中を巡っては、
細胞に沁み込んでいく。