天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
それぞれの葛藤
脳外科病棟は相変わらず忙しく、今朝は昨晩救急車で運ばれてきた患者さんのオペが続いていた。
患者さんは交通事故による脳挫傷、急性硬膜外血腫で、執刀医は宿直を担当した陽貴さんだ。
朝の申し送りで、夜勤だった主任の話が耳に届く。
「昨晩の交通事故の患者さんは、片山(かたやま)翼(つばさ)さん二十四歳。実業団のバレーボール選手らしいわ。右側頭部の脳挫傷および、急性硬膜外血腫で搬送されてきて、救急で倉田先生が処置。穿頭(せんとう)して減圧を試みたあと、広範囲減圧開頭術、血腫除去術が行われています」
つまり血腫が一気に大きくなって、オペ室に運んでいては助からないと判断した陽貴さんが、救急の処置室で血腫の一部を取り除いてから緊急オペに入ったということだ。
そんな大変な手術をしているとは。
「助かればいいんだけど」
主任はチラリと時計を見てつぶやいた。