天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
「今日は特にきつかったからなぁ。片山さん、搬送された時点で血腫がかなり広範囲にわたっていて、救急の研修医が救命は無理じゃないかとあきらめそうなほどだった」
そこで放棄しないのが陽貴さんだ。
「片山さん、宿直が陽貴さんでよかったね」
「ありがと。けど、このまま順調に回復したとしても、おそらく後遺症は免れない」
命は救えても完全に元には戻せない。
こんなことなら死んだほうがよかったと叫ぶ患者さんもいる。
彼はそうしたジレンマといつも闘っている。
「結果がよいほうに転ぶばかりじゃなくて、へこたれそうになるときもある。でも、季帆と一緒になってからは、落ち込む時間が圧倒的に少なくなった」
「そうなの?」
ずっと隣に住んでいたとはいえ、彼が研修医になったあたりから行き来はぐんと減った。
だから、どんなふうに生活していたのかよく知らない。