天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 片山さんは、そんなふうに思っていたのか。

 実業団でバレーボールができるのはほんの一握りの選手だけ。

 片山さん自身もかなりの努力を重ねてきただろうけど、お母さんも必死に支えてきたはずだ。
 彼はそれがわかっているのだ。


「プリン、ありがとう。懐かしかった」
「翼……」
「俺、もうちょっと世話になってもいい?」
「あたり前よ」


 そこまで聞いたところで瞳が潤んできて目頭を押さえる。
 すると陽貴さんが私の頭をポンと叩く。


「もう今の会社にはいられない。でも、リハビリ頑張って仕事探すよ。いつか母さんを楽させるから。ごめん」


 片山さんの強い覚悟を感じる言葉に唇を噛みしめる。

 こう言えるまでどれだけの葛藤があったのだろう。
 どれだけ泣いたのだろう。

 この先もたくさんの困難が待ち構えているはずだ。
 でも、きっと彼なら乗り越える。


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