天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
「よかったな。このままではまた医療ミスが起こると心配してたもんな」
「うん」
「俺だってミスをしない保証はない。でも、ミスをしても隠せばいいとは思っていない。そんな気持ちでメスを持つことは許されない」


 彼は私を抱き寄せる。


「だけど、自分を追いつめすぎな季帆が心配だよ。お前はあの先生とは違う。季帆はミスをしていないと、オペ室にいた誰もが証言してるんだろ?」
「そうだけど……」


『お前が患者を傷つけたんだ』という近藤先生の声が耳にこびりついて離れない。


「焦らなくていいから心の傷を癒せ。俺がついてる」
「ありがとう」


 彼に守られながらゆっくり前に進もう。
 私は気持ちを新たにした。



 同じ頃、野上総合の脳外でも異動があった。

 研修医の門脇先生は、次は麻酔科の研修をすることになり脳外科を去っていった。

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