天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
「ちょっと行ってくる!」


 すさまじい勢いでナースステーションを飛び出してエレベーターに向かう。

 しかし、車いすの患者さんがたくさん待っていたので、私は三階のリハビリ室を目指して階段を駆け下り始めた。


「わっ!」


 あわてすぎていたせいで足がもつれて体が前に傾き、転げ落ちる!と覚悟した瞬間、うしろから抱きかかえられて事なきを得た。


「危な」
「陽貴さん……」
「気をつけろ! 季帆の開頭手術なんてしたくない」
「ごめんなさい」


 珍しく声を荒らげた彼が心配しているのが伝わってきて反省する。
 落ち着かなくては。


「安田さんが」
「うん、聞こえてた」


 だから追いかけて来てくれたのかな。


「行くぞ」


 彼は私の手を握り、走り始める。

 三階に到着したときには息が上がっていたが、私はすぐに安田さんを捜し始めた。


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