天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
「お願い、まだいて……」
「季帆、あそこ」


 安田さんを先に見つけたのは陽貴さんだ。

 彼女はリハビリ室のドアについている小さな窓から、ちらちらと中をのぞいている。
 やはり、片山さんが気になるのだ。

 私たちが近づいていくと、彼女はハッとした顔をして走り去ろうとした。


「待って」


 あわてて腕をつかみ止める。


「ごめんなさい。ごめんなさい……」


 一体なにに対して謝ってるの?


「元婚約者がのぞきに来るなんて不愉快ですよね。ごめんなさい」


 あっ、そうか。彼女はまだ私と片山さんが恋仲だと勘違いしているんだ。


「違うんです。あのっ……」


 どう説明したらいいのだろう。
 混乱して口を閉ざすと、陽貴さんが代わりに話し始めた。


「安田さん。片山さんは今、リハビリを懸命にこなしています。それは大きな目標があるからです」
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