天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
「目標? 元の生活に戻れるようにですよね」

「もちろん、それもあります。でもそうしたいのは、好きな人を自分の力で幸せにしたいからです」


 陽貴さんが伝えると、彼女は途端に眉尻を下げて私をチラッと見た。


「私……」


 顔をしかめる彼女の声が震えだす。


「翼のこと、よろしくお願いします」


 深く頭を下げられて目を見開く。
 私に託すと言っているのだ。


「違う。違うんです」


 焦って首を横に振ると、陽貴さんが続く。


「安田さん。片山さんが幸せにしたい相手が誰なのか、確かめなくていいですか?」

「だって彼はあなたのことを……」

「それであきらめられる相手なんですね」


 陽貴さんが放ったのは冷たい言葉のようだが、彼女の背中を押すにはこれが一番いいのかもしれない。

 うつむいて黙り込んだ安田さんは、拳を固く握り震えている。


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