天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 私は邪魔だと思い、別の部屋にでも行っていようと考えていたのに誘われた。
 しかも『奥さん』なんて普段呼び慣れていないので面映ゆい。


「季帆もコーヒー持っておいで。気を使うような相手じゃないから」


 陽貴さんの笑顔がいつもよりまぶしい。

 本当に気を許した友人なんだろうなと感じられて、私はお言葉に甘えた。

 自分の分のコーヒーとフルーツタルトを持って、床に敷いたクッションに座る。


「奥さん、倉田の隣にどうぞ。俺、こっち借りる」


 ふたり並んでソファに座っていたが、木藤先生は私と場所を交代して九十度の位置のひとり掛け用のソファに移動してくれた。
 気がつく人だ。


「奥さん、オペ看だったんですよね」


 知ってるんだ。でも親友なら話しているか。


「はい」
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