天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
「俺、京浜大学の外科にも何人も知り合いがいて、もったいないナースが辞めちゃったって嘆いてましたよ。特に、長沼(ながぬま)」

「長沼先生!」


 懐かしい名前に反応して大きな声が出てしまい、ハッと口を押さえる。


「季帆、知ってるの?」


 陽貴さんに問われてうなずく。


「うん。私を器械出しに指名してくれてた先生なの。すごくお世話になったよ」


 長沼先生のオペはかなりの数をこなした。
 物腰柔らかで優しい先生だ。


「長沼も世話になったと話してたよ。すごい勉強家で、一度組んだだけで次にはもう癖を覚えてくれてるって。モニター管理も完璧でお気に入りだったらしいよ」


 ドクターそれぞれに使いやすい器具が異なるので、その日の執刀医に合わせて準備する数などを変えていた。


「やっぱり優秀なんだな、俺の妻は」
「お前が威張るなよ」


 木藤先生は白い歯を見せた。


< 294 / 373 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop