天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
「一応うちの脳外にも診てもらった。で、オペが妥当だけどかなり難しいという判断だ。俺もそう思う。それで、セカンドオピニオン代、まけてくれる?」


 こんな深刻な話をしているのに、木藤先生はおちゃらけている。

 おそらく私たちの表情がこわばっているので和ませようとしたのだろう。


「出世払いだな」


 陽貴さんはやっとのことでそう吐き出した。


「それじゃ、出世できるように治してくれよ。あー、でもうちのガキ大将、医者になりたいんだと。医学部は金がかかるから、まけといてくれ」


 木藤先生は口角を上げているが、目は笑っていない。


「こんなところで負けるわけにはいかないんだ」


 そして次に絞り出された言葉には、絶対に治すという強い決意が表れていた。

 しかし陽貴さんは検査データを見たまま考え込み、なにも言わない。


「倉田、引き受けてくれるんだよな。武士に二言はないよな」
< 297 / 373 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop