天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 いつまた暴れだすともしれないという緊張感が漂っていた。


「国枝、セレネース」


 陽貴さんは鎮静剤を準備するように指示を飛ばす。


「待ってください」


 せん妄を起こすきっかけがなんだったのか探るために周囲を確認していると、床に補聴器が落ちているのを見つけて陽貴さんを止める。


「富岡さん、補聴器つけますね」


 眼鏡や補聴器といったいつも使っている補助具の未装着も誘因因子になるため、富岡さんの耳につけた。


「聞こえづらくて不安でしたね。今、先生が診てくれますよ」


 途端に表情が柔らかくなった富岡さんに話しかけながら陽貴さんとアイコンタクトをする。


「富岡さん、機械つけますね。痛くないですから心配しないで」


 陽貴さんはパルスオキシメーターを指につける。

 せん妄は血液中の酸素レベルの低下がみられる場合が多いため、それを確認しているのだ。
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