天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 先に入室した彼女は、私がドアを閉めた瞬間くるっと振り返り凝視してくる。

 また文句が始まる?

 覚悟したものの「ごめんなさい」といきなり頭を下げられて目が点になった。

 あんなに強気な彼女が謝罪するなんて、どういう風の吹き回し?


「私、あなたにひどいことを言ったわよね。ごめんなさい」


 神妙な面持ちの長崎先生は、改めて腰を折り微動だにしない。


「あっ……わかっていただけたなら、もう大丈夫ですから」


 彼女の本気が伝わってきたので、そう伝えた。

 正直、大勢の前で罵倒されたときはいたたまれない気持ちになった。
 彼女とはこの先ずっと相容れないとも感じた。

 しかし、私たちが対立したままでは患者さんによい医療を提供できない。

 ようやく顔を上げた彼女は、再び口を開く。
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