天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 もしかしたら、あの医療ミスで傷ついた私を励ましてくれているのかもしれない。
 それでもうれしい言葉だった。


「オペ看は、外回りの担当にならないと患者さんに接しないのは知っているでしょ? だから、これまでできていたかどうかわかりません」


 手術室勤務の看護師は、執刀医の隣で器具を差し出していく器械出しと、外回りの仕事に分かれる。

 患者さんの精神的サポートも含め、器械出し以外のすべてを担う外回りは経験も必要で、初めて担当したときは手術後、緊張で張り詰めていた気持ちが切れたからか座り込んでしまったのを覚えている。

 その外回りの担当のときは術前の患者さんに面会するが、一日中そばにいる病棟看護師には敵わない。


「いや、今の季帆を見ていたらわかるよ。今回は本当に助かった。ありがとう」

「陽貴さんがお礼を言わなくても」

「さて。そろそろオペ室に行かないと。今日は長くなりそうだから、元気くれない?」

「元気?」


 首をひねりながら彼を見つめると、あっという間に唇が重なったので目が点になる。
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