天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 そのため口腔内を清潔に保つのはとても大切なのだ。

 カートの上には特殊なスポンジタイプの歯ブラシや舌用のブラシなどが準備されていた。

 先に病室に向かった国枝さんを追い彼女も出ていこうとするのでつかまえてこっそり耳打ちする。


「保湿ジェルがあったほうがいいかも」
「あっ、そうだった」


 彼女は足りないものに気づいてあわてて追加している。


「香月さん、助かりました。また叱られるところでした」
「いえ。頑張ってください」


 彼女を笑顔で送り出すと、陽貴さんが隣にやってきた。


「さすがだな、我が妻は」
「ちょっ、聞こえますって」


 ナースステーションには数人のナースが残っているのに。
 私は焦ったけれど、彼はクスッと笑っている。


「これ、来週のオペ予定」
「金曜はないんですね」


 思わず妻としての言葉がこぼれた。
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