天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
「それで、休暇届の偽造はなに?」
「見逃してくれよ」


 彼は悪びれた様子もなく表情を緩める。
 そして、ソファに脱ぎ捨ててあったジャケットのポケットからなにやら取り出して広げた。

 よく見ると旅行の計画書のようだ。


「沖縄(おきなわ)?」
「そう。新婚旅行に行こうと思って」


 新婚旅行?


「本当は海外に一週間とか連れていきたいんだけど、沖縄で勘弁」


 そんなの無理だとわかってる。
 脳神経外科はドクターが足りないくらいなので、三日連続で空けてもらうのも大変だったと思う。


「十分だよ。私、沖縄は初めて」
「知ってる」


 そっか。
 香月家と倉田家は家族ぐるみの付き合いをしていて、旅行に行けば必ずお土産を渡す仲。
 幼い頃には、一緒に海水浴に行った記憶もある。

 だから私の行動もよく把握しているはずだ。


「なんで黙ってたの?」
< 61 / 373 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop