天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 そこにナースの国枝(くにえだ)さんがやってきて、あわただしくナースステーションの奥に入っていく。


「香月。耳が真っ赤だけど、どうかしたの?」


 なに言ってるの?

 陽貴さんの指摘にあわてふためいて耳を押さえる。


「そういうときは、『なんのことですか?』と切り返すんだ。耳を押さえたら赤いと認めたのと同じだぞ」


 小声で余計なアドバイスをした陽貴さんは、ニヤッと笑ってからようやく離れていった。


「自分でけしかけたくせに」


 絶対に面白がられている。

 ずっと頼りがいのあるお兄ちゃんだった陽貴さんだけど、結婚して今まで知らなかった顔をたくさん見られるようになった。

 こうやって私をからかう、ちょっとイジワルな面があることなんて知らなかったのだ。

 もちろんそれが嫌だというわけではない。

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