【完】セカンドマリッジライフ
「何も出来ない自分の無力さを嘆く時がある。 特にゆなちゃんの涙を見てしまうと…
分かってはいるんだ。命のあるものに必ず死が訪れるという事も。
でも何度向き合っても…慣れるもんじゃない…。 きついな…」
ソファーに寄りかかり片手で顔を覆った利久さんは、私に見えないように泣いていた。
利久さんだって辛い。 だって何年も見守り続けた患者と家族だ。
けれどちゃんと利久さんの気持ちはゆなちゃん達に伝わっているし、ポテトにだって伝わっている。
儲け主義でやっている獣医ならば下手な延命をして金儲けをしていたかもしれない。 ただの動物病院の獣医と患者だ。 それでも利久さんは花束を買いに行って、ポテトの遺骨に手を合わせていた。
折曲がり小さく見えた背中を自然に抱きしめていた。
愛はもしかしたら芽生えていくものなのかもしれない。 何気ない毎日の小さな積み重ねの上で。
芽生え始めた小さな種がいつか大輪の花をつけて、永遠の愛になるのかもしれない。
その夜初めて私は利久さんのベッドで一緒に眠った。 彼の肌の温かさを感じて愛しさがまた一つ積み重なっていった。