【完】セカンドマリッジライフ
そこには片方だけになってしまったエンゲージリングと一枚の写真がある。 ……こんな物早く処分するべきだった。いつまでもねちねちと未練がましく過去の事など…。
エンゲージリングは当時結婚していた妻とお揃いで買った物で、写真の中には俺と…そして武蔵を抱いている前妻の笑顔の写真だ。
神山 のえる。 雪乃がのえるを知らないはずがない。
同じ業界を生きていたのならば。 のえると出会ったのは俺がまだ大学生の時だ。 その時既に彼女は雑誌の読者モデルから多大な支持を得るカリスマモデルになろうとしていた。
のえるは身長こそ高くはなかったが周囲から愛される才能を持っているような人間で、瞬く間に人気モデルへ成長していった。
結婚したのはまだ互いに20代前半だった。 燃え上がって一気に結婚したのはいいものの、のえるは家庭に入れるような人間でもなかったし、ましてや北海道に移住したいという俺の夢には難色を示した。