【完】セカンドマリッジライフ

武蔵を飼ったのはのえるだ。

しかしモデル業やそれに伴ったアパレルブランドが丁度軌道に乗ってきて、若かった彼女は結婚に縛られるのが嫌だと言い出した。

結婚生活はわずか一年ちょっと。 のえるは業界の華やかな社長と不倫をして、俺と武蔵を捨てた。 ゴミ箱にゴミをぽいっと捨てるように、軽々しく捨てていった。

若かったのだと思う。 結婚が早すぎた。 ただの獣医師などそもそものえるには物足りなかったのだろう。 それでも俺はそんな彼女をとても愛していた。


もう生涯誰とも結婚する事はない。 未練がましくエンゲージリングや写真を残すほどには、彼女の事を愛していた。

「はぁー……」

どんなに愛しても人は必ず離れていく。 ソファーに寄りかかる俺の隣、武蔵が寄り添うように丸くなり大きな瞳でこちらを見つめてきた。

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