【完】セカンドマリッジライフ

裏切らないのは動物達だけか。
のえると雪乃が違う人間だという事は理解していた。

けれども華やかなステージがどうしても似合ってしまう彼女が、いつか自分から離れていく事を考えるとまた憶病になる。

手に入れたと思って浮かれてその幸せに浸っている時、それを失う事が一番怖いのだ。   だって雪乃は本来であるならばこんな田舎街にいるような人間ではない。

少しずつ心を閉ざしたくなるのは、憶病な俺の弱さだった。

―――――

「ねぇッ…本当にイチ、ニ、サン、大丈夫かなあ?」

七月の半ば。 三日間動物病院を休診して東京に向かう。
その飛行機内で雪乃は心配そうな眼差しをこちらへ向けた。

「まあ、二泊はギリだな…。せめて朝夜うちにご飯あげてくれる人が居れば良かったんだけど」

「はぁ~…利久さんってば友達がいないからあ。心配すぎる。私達から離れたら悲鳴みたいな声で鳴いてたもん…」

「友達が居なくって悪かったな…。 猫は人に付くというよりも家に付くと言われているから、家が代わったら相当なストレスになるんだと思う…。
それに引き換え武蔵はペットホテルのお姉さんに抱かれていつもより嬉しそうだったがな…」

「あ、あれね、ひゃははッ。犬はこういう時薄情だよねぇー」

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