【完】セカンドマリッジライフ
「……はぁ、疲れた。 てゆーか利久さん結婚式のアルバムどこにしまったんだろう…。」
何気なくテレビ台の引き戸を引き奥を手探りで探していると、奥から一枚の写真とアクセサリーケースが出て来た。
それを見て心臓がドクンと跳ね上がる。 手に持つ写真が震える。 その中には仲良さげに写る利久さんとのえるさん。のえるさんに抱かれている武蔵の写真。
アクセサリーケースの中には片方だけになった結婚指輪が入っている。 こんな物を利久さんがまだ大切に持っていたなんて…。 ぽたりと涙が溢れて来た。 それに気が付いた武蔵が側に寄ってきて「クーン…」と切なげな眼差しを向ける。
ぎゅっと抱きしめると温かい。 …本当は利久さんはまだのえるさんを忘れていないのかもしれない。 まさかのえるさんが利久さんの前の奥さんだったなんて…。
「雪乃…?雪乃?寝ちゃったか?」
利久さんが帰って来てからも寝室にこもって返事もしなかった。
いま、利久さんの前で笑える自信がない。
楽しみにしてたチーズケーキ。 一緒に過ごすはずだった三連休。 全てが色褪せて見える。
利久さんは私の事を本当に好きでいてくれているんだろうか…。 のえるさんに再会したらやっぱりのえるさんが良いって思ってしまったんじゃないだろうか。
いつの間にか私の方がずっと利久さんを好きになっていた。 こんなに好きだから嫉妬してしまう。
でもどうしても本人を前にしたら無理をしてでも笑ってしまう自分が分かるから、今は利久さんの前で笑いたくない。
時間が経つことに本物の夫婦になれている気がしていた。
けれどそれもこれも全部私の思い過ごしだったのかもしれない。