【完】セカンドマリッジライフ
「そこまでは誰も言ってないけれど…。 それにしても雪乃料理が上達したなあ。 まるでホテルの朝食みたいだ」
「今お味噌汁もよそいますから、食べちゃいましょう…! えへへ~利久さんの好きなじゃがいもの味噌汁にしましたあー!」
「それは嬉しい。 いただきます。」
誰かと囲む朝食が幸せだと感じたのも久しぶりだ。
モデルの仕事を始めて一人暮らしをし始めたら、キッチンは全く使わなくなった。
忙しすぎてゆっくりと朝食を取る習慣もなかったし、時間が不規則な生活のせいで出前やお弁当ばかりだった。 まるであの忙しない日々が夢だったようだ。 キラキラとした世界でスポットライトを浴びて沢山の人に称賛される。
あの時も幸せだったけれど、今の幸せには比べようがない。
本当の幸せは色を持たない。 特別な事なんて起こらない何気ない毎日がこんなにも幸せなのだ。
朝目を覚まして太陽の光を体めいっぱいに浴びる事が、こんなに陰りのない幸せだったなんて。 生き急ぎ過ぎていたあの日々では感じられなかった。