【完】セカンドマリッジライフ

私の顔を見て優しくそう言った利久さんを見て、目頭がどんどん熱くなっていく。

北海道に住みながら利久さんの妻で居てモデルの仕事を続ける事は出来る。 でもその中で距離が産まれる事も知ってる。

東京で仕事をし始めたら今までのように毎日利久さんの動物病院を手伝う事は出来ない。 今回だけの仕事だとしても、そこから派生して違う仕事も頼まれるかもしれない。

いや、そんな事より一番大切なのは利久さんの言う通り自分の気持ちなのだ。


私は今までの人生流されっぱなしだったのではないか。
10代の頃モデルの仕事にスカウトされて何となくここまで来てしまった。

楽しいと思える事もあったけれど、何故か気の休まらない毎日で誰にも気を許せずにいつの間にか’大丈夫’が口癖になっていた。

そうやって何年間も生きているうちに壊れてしまったのだ。 一年間も都内のマンションに引きこもってしまうほどには。

私は強くない。 あの世界はもう私のいる世界ではない。

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