【完】セカンドマリッジライフ

「車の中あったか~い…」

ルームミラー越し、ちらりと運転手と目が合う。 運転手は目尻を下げて優しく笑った。

「お客さん、観光の人?」

「観光ってわけじゃあないんですけど北海道は初めてで。
こんなに寒いなんて想像もしていなかったからビックリです。」

「そりゃあそうだよ、ここらは盆地で二月が一番冷えるんだ。 それにしても寒そうな恰好だねぇ。おじさん心配になっちゃうよぉ」

「キャハハッ、これでも自分なりの防寒のつもりだったんですけれど」

タクシーの運転手いわく、私の恰好はありえないらしい。

自分なりに覚悟を持った格好で北海道に乗り込んできた。 襟元にファーの付いたベージュのコートに、確かにスカートは短かったけれど防寒対策でヒートテックの真っ黒のタイツを履いてきた。

しかし雪の上を歩くには、ヒールの高いロングブーツは命取りになるとさっそく学んだ。 空港を出た瞬間に転びそうになったからだ。

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