【完】セカンドマリッジライフ

俺らしくない言葉を口にしたのもどうかしていたとしか思えない。

「前の妻とは東京に居た時に結婚したんだが…」

「利久さんの…?」

こくんと頷くと珍しく神妙な面持ちで話に聞き入る。

「ああ、まだ20代前半の頃だった。 彼女も君と同じで東京生まれで東京育ちの都会的な女性だった。
一度二人で北海道に夏に旅行に来たことがあってね。 …その時は散々だったな。
ヒールなんて履いてきて歩くのが疲れる、だの。虫がいっぱいいて嫌だと文句をぶーぶー言い出して直ぐに喧嘩になった。
あれは史上最悪に嫌な旅行だった。」

「そうだったんだ…。」

「俺は元々東京も嫌いだったし自分の家の動物病院で働くのも嫌だった。 いずれ北海道に移住して自分の病院を持ちたいという淡い夢もあった。
けれど彼女はそれに大反対でね。
最初から性格自体が合わなかったんだと思う。それでも若い時は好きって気持ちだけあって勢いで結婚してしまって、あっという間に崩壊していった。
今にして思えば俺にも悪い所が沢山あったんだと思うよ。」

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