【完】セカンドマリッジライフ

「嬉しい…!利久さん、ありがとう!」

素直に嬉しいという気持ちを表現できる事。
ありがとうとお礼の気持ちを言える事。

実は簡単な事のように思えて、大人になるほど難しい事だ。
そしてそれは俺に持っていない所だらけだ。

不思議な気持ちだ。 今日は笑ってばかりいる気がする。 今日だけじゃない、彼女が来てからの生活は一変した。

まるで色のなかった世界が華やかになっていくように。

―――――

「にゃあーん、にゃあーん。」

ボス猫であるイチが甲高い声を出して浴室に続く扉を爪で研いでいる。

今日は一日中観光に付き合わせられた。しかし雪乃は一日中元気で現在お風呂に入っている。

青い池にもあの得意の引き笑いを響かせて感動していたし、ガラス工房やオルゴール館で爆買いをしていた。

勿論働いて貰っている分給料は彼女に渡しているのだが、中々に買い物は派手なタイプだ。 そしてこっそりと彼女に似合いそうなガラスで出来たネックレスを買ってはみたものの、渡すタイミングをすっかりと逃してしまった。

籍は入れたが結婚指輪はおろかプレゼントを一度もした事がなかった。 だが、これはそういう結婚でもないしそもそも夫婦らしい事はしていない。 だからプレゼントは少しだけ重たいか?

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