【完】セカンドマリッジライフ
「どうしたの?ゆなちゃん。ポテトは今日もすっごく元気だったよ?ゆなちゃんいつも一緒に寝てるんだって?きっとポテトも嬉しいだろうね」
子供相手のせいか利久さんの口調はいつもより少し優しい。 膝を折り曲げ彼女の目線の高さになり、ゆなちゃんの頭を優しく撫でる。
来院する人間にはとても温厚で優しい利久さんだけど、子供にはいつも以上に優しい。 きっと子供なんて居たら良いお父さんになるのだろう。
「ねぇ、利久先生と雪乃ちゃんの赤ちゃんはまだなの?」
ゆなちゃんの余りにも無垢すぎる言葉に、利久さんは頭を撫でたまま固まってしまった。 横に居たお母さんが焦って「ゆな、突然何言ってるの?!」と彼女をたしなめる。
「あ、ははははは…」思わず私も愛想笑い。 だって私達の間に赤ちゃんなんて出来るはずがなかった。
一緒に暮らして四ヵ月。 形だけでも夫婦になって四ヵ月。 私と利久さんの間に男女の関係はない。 それどころかキス一つさえした事なかったのに。
「だって結婚したら赤ちゃんが出来るんでしょう?ママ言ってたじゃん。利久先生と雪乃ちゃんが仲良くしてたら赤ちゃんが出来るのよぉって。」
「まッ。この子ったら。私はそんな事言ってませんよ? 先生も雪乃さんも本当にごめんなさいねぇ?
ゆなったら!」