俺様幼馴染は素直になれない!
*
「結愛ちゃん、可愛いからね。他の男も狙っている人いたりして」
一樹は携帯を弄りながら、冗談で言っているつもりだと思うが、俺にはそう聞こえなかった。
冗談ではなく、本当に現実になっているからだ。
「………」
俺は布団に被っていたので、顔だけ出して敵を見つけたかのように一樹を睨んだ。
「怖っ。はいはい。ニセ彼女なんか頼まないで、好きなら、言ったら考え変わるかもよ」
一樹は両肩を上げて、苦笑いを浮かべていた。
「…ニセ彼女頼むしかなかったんだよ。だけど、そうしないと結愛に近づけないだろうと。あー、もうどうしよう。あの男、絶対結愛を狙ってるに違いない」
瑠翔は天井の壁を見上げてから立ち上がり、あぐらをかいて両手を組み、舌打ちをした。
「え?いるの?誰?」
一樹は携帯をカバンに入れて、瑠翔と顔を合わせる。
「上杉って男。一樹知ってるか?」
俺は一樹に聞いた。
一樹も知らないはずだ。高校1年生で学年も違うし。
思い立ったのか近くにあった鞄を一樹は手に取っていた。
「いや、知らないね。結愛ちゃんと同級生だよね。うーん、知らないなあ。あ、SNSで調べればあるかも」
鞄に閉まった携帯を取り出して、一樹は俺にそう言って調べた。
一樹も知らないらしい。
あの男なんなんだよ。
立ち聞きした時、同じクラスってことを知った。
結愛が俺の知らないとこで、知らない男と話すのは嫌だ。
俺は頭を抱えて、考えていた。
「あ、あった。多分これじゃない?上杉周。同じ高1だし、上杉って苗字は男ではこいつしかいなかった」
一樹は携帯を弄りながら、俺に見せてくる。
「こいつだわ。顎あたりに確かホクロがあった。こいつだ」
俺は携帯の画面を上杉がいるかのように睨みつけた。
「マジか。こいつ、一枚だけ顔写真あった。クラスで撮ったやつ。あ、結愛ちゃんもいる。あとは、クマのぬいぐるみしか写ってないね」
一樹は写真を指でズームしてから俺に見せた。
その写真にたしかに愛想笑いをした結愛が写っていた。