俺様幼馴染は素直になれない!
こういう風に手繋ぐのさえも、付き合っているようにみえるのかな。
私は考え事をしながら、上杉くんの手に引かれたままどこかに連れ去られた。
上を見上げると、そこは人気が少ないところで、すぐ近くに廊下はあるが、この棟は倉庫扱いなので誰も来ない。
「上杉くん」
私は上杉くんが手を離した瞬間、名前を呼んだ。
「ゴメン。こんなとこまで連れてきて。誰にも聞かれたくなかったから…」
上杉くんは優しい瞳で私を見つめ、切なさそうに答えた。
「う、うん。話は何?」
私は上杉くんに聞き返した。
「相波さん。今度の土曜日、一緒に水族館行かない?」
予想だにしない答えに私は驚いた。
上杉くんは、うん?と上目遣いで首を傾げて私に聞いてきた。
「え?私?」
私は自分の人差し指で自分を指した。
静寂の中、私たちの声が棟に響き渡る。
「うん。そうだよ」
上杉くんは笑顔で私に返事をする。
あの対決で上杉くんと目があったけど、まさかねと思っていたら、ほんとにそうだったの。
いや、え?
「なんで?私」
私は思わず上杉くんに聞いた。
「この前瑠翔先輩と対決したでしょ。勝ったら、結愛ちゃんとデートするかどうか賭けてたんだ」
上杉くんは、あの対決の時に内緒と言っていた事実を話し始めた。
「…え?上杉くん。好きな人とデートしたいって…私じゃない人と間違ってんじゃないの?」
私は思わず聞いて、私ではないはずと思った。
いや、だって上杉くんとはやっと気があって、話せる仲になったのに…
好きな人は、私って……