Lの色彩
「色? 見えないって? モノトーンってこと?」
「俺のは、好きな色が見えないんですよ」
医師の言葉をそっくりそのまま借りて赤が見えないと説明すれば満は不思議そうな顔で首を傾げた。
「見えない色なのに好きなんですか? 見える色を好きにならないんですか?」
まあそうなればまたその色が見えなくなってしまうのだろうけど、とも付け加えた。
それは自分も家族も一度は考えたことがある。
例えば青なら見えるだとか、オレンジなら暖色系統だしだとか。
自分はなぜこんなにも赤一色に固執しているんだろう。
一番頭を悩ませた疑問でもある。罹った理由なんかはどうでもよかった。なってしまったものは仕方ないと割り切れてしまえたから。
けれど固執する理由だけは考え続けた。こんなに赤が好きなのに。見たい色だとわかっているのに。ほかの色を好きになればいいだけなのに、なぜ。
気が付いてしまえば簡単だった。