Lの色彩
「どうしても赤が見たいってずっと思ってるんです。見えない分、見たいと思って余計に執着して結局そんなんじゃほかの色になんて関心は移らない。だから俺が諦めでもしない限り俺は赤い色なんて一生見えないままなんです」
治すのは諦めようとしてるくせに。赤という色だけは諦められない。
子供の時に好きだったもの。いま諦められない理由もなんとなくそこにあるように思う。
わがままな諦め方なのはわかっているけどそれでも治せるなんて思ってない。
満とちがって完治の前例もないから考えるだけ無駄だとも思う。
あるいは童話症候群のせいにしてしまってもいい。そのあたりはなんでもよかった。
「少し話せればいいと思ってたんです、ありがとう付き合ってくれて」
「いえ、誘ったの私ですし。……あの、差し支えなければ、連絡先をいただけませんか。自分以外の患者さんと話したことなんか、ないんです」
似ているな、と思った。
なにもかも悲観気味なところが自分に。