Lの色彩
平然としているようで無機質なくせにどこか陰鬱としたあの待合室に。
自分たちはバケモノで、世の理から外されているのに人間のふりをしながら生きていて、それでも死にたいと思える度胸すら持ち合わせていなくて。
自分は大っぴらに好きだと言える代わりに、執着し続ける限り赤い色は一生見えない。
満は執着なんてしていないのに好きだという単語がずっと使えないまま。
不毛だなと思う。いっそ彼女か自分だけがどちらの症状も罹患していたら今頃片方は幸せで、片方はなにもかもを諦められていたはずだ。
中途半端な自分たちは二十歳になったってどことなく不完全で生きている実感を持つのが難しい。
もちろんこれは罹患者あるあるだから自分たちに限った話じゃないけれど。
「デートの誘いならいつでも。駅まで送ります」
「そんな言い方してるから色男だと思われるんですよ」
チャットアプリの新しい友達、という欄に「愛島満」と表示される。
何気ないいつものその画面の中で友達という単語だけが妙にくすぐったくて、お気に入りのボタンを押していた。