Lの色彩
この大きな総合病院の中で、つまはじきにされたような西棟の八階で、たった三室しか診断室のないこの科で、二人しか担当医がいないこの科で、あと何人似たような症状の人を抱えているんだろう。
入院となったら、ここでは足りないからと違う病院へ移される。
そんな話ももうだいぶ前に聞いた。そこの患者たちからもいまだに相談を持ち掛けられるらしいというのも聞いた。
医者冥利に尽きるね、なんて笑っていたけれど自分にはそれすらも恐ろしかった。
彼が若いうちから発言力があったのはここが特殊な科で、日本には数名しか専門医がいなくて、患者のほぼすべてが不治であるからだった。
奇病科。
まるでおとぎ話の、どちらかというと呪いのような症状を持つ人間が通う場所。
それがこの甲堂記念病院だった。