Lの色彩

 自分がいつからその奇病に罹患したのかは覚えていない。

 ただぼんやりと今とは違ったなという幼い記憶があるから生まれつきじゃないことだけは確かだった。

 赤い色が好きだった。

 自分が幼いころも、今も、戦隊ヒーローのリーダーはいつだって熱血漢で、優しくて、少しだけおっちょこちょいなくせにどのカラーよりも格好良かった。

 自分もレッドになりたかった。女の子たちの赤いランドセルが少しだけ羨ましかった。

 赤い服が多かった。自分もヒーローになりたかった。

 きっとどんな子供でも一度は思い描くだろうその理想がいつからか自分の首を絞め始めた。

 見えないのだ。

 いや正確には見えなくなったのだ。
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