双生モラトリアム
妹と姉


「ねえ、姉さんってさぁ。恥ずかしくないの?」
「え?」

年明け。新年の挨拶に来た舞は、綺麗な晴れ着に身を包んでた。多分、相当な高級品だ。
メイクも髪も完璧に仕上げた妹は、どこぞのモデルや女優と言っても差しつかえないほどに美しくて。
新年でも着古した室内着でノーメイクだった私を、いつも通りに蔑んだ目で見た。

「なに、その近所のスーパーに出掛けるその辺のおばちゃんみたいな格好。女として終わってる。姉さんはいいかもしれないけど、母さんが気の毒でしょう?ちょっとは人の目や世間体ってものを考えなよ」

私と二人きりの時だけ、舞は辛辣になる。

小学生以来嫌われてるのはわかってた。だから、なるべく近づかないようにしてたけれど。双子というのは厄介で、“大人の余計な配慮”のお陰で大抵学校では同じクラスにされたから、舞はたまったものじゃなかったろう。

こんな劣った姉がいるなんて。優秀な舞には耐えられなかっただろうな。だから私は自分から舞には近づかなかったし、舞も私をスルーしてた。それでうまく行くはずだったのに……。

「まあまあ、樹くんもよく呑めるようになったのね。頼もしいわ」

舞と一緒に来た樹は、元々両親のお気に入りだった。同じ団地に住んでいた時期からの幼なじみだったし、お父さんも娘のどちらかと結婚させるぞ!……なんて夢を抱いてたみたいで。

お父さんが生きていたら、きっと舞と樹の婚約を手放しで喜んでただろうな。



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