双生モラトリアム

色々質問してきた立花先生は話上手で、次第に緊張が解れリラックスできたのが驚き。警戒心を解くのはお手の物みたい。

「……うん、不正出血も副作用も無さそうですね。問題の生理の周期もコントロールできている、と」

お医者さんとはいえ、男性にこんなデリケートな情報をぺらぺら喋ってしまって……自分でも信じられない。
今さらながら顔が熱を帯びてるから、絶対赤くなってる。隠したくなって両手で顔を覆った。

(嫌だ……は、恥ずかしい)

「大丈夫ですよ。僕がムリに喋らせたんですから、怒ってくれて構いません」
「えっ」

意外な事を言われて顔を上げると、立花先生はにっこり笑って自分の頬をちょんちょんと指差した。

「なんなら、ビンタでも拳でも食らわせてください。お好きにどうぞ」
「えっ……そ、それはちょっと……」

さすがにそこまで腹立たしいわけじゃないし、と焦った私に「春日さんは優しいんですね」とまた笑って。

「……ですが、それに漬け込まれてはいけませんよ……特に男、に」
「えっ?」

小さく、なにかを呟くように言ったけど。私にはよく聞こえなかった。

「いえ、何でも?……そうですね。この種類ならば問題なさそうですし、今回の診察で最大6ヶ月分の処方箋が出せますが。どうしますか?」

半年ぶん……
7月半ばまでか……。

「……いえ、1ヶ月ぶんでいいです」

新年の挨拶回りで、私が家から出ていく時に舞が言ってた……。

“ようやく結婚の予定が立てれそう”……って。
そのあと、お母さんが浮き立って“舞が秋には結婚する”って教えてくれた。

なら、もう私は用済みになる。

樹に捨てられる日は近いんだから……。

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