双生モラトリアム



どうせ樹はいないと思って、例の待ち合わせ場所はスルーした。 雨でなく雪だったし、寒さが嫌いな彼がわざわざ私を待つわけないんだ。

(あれ?灯りがついてない……)

スーパーに寄らずまっすぐ帰ったのに、アパートの窓は真っ暗。お母さんがこの時間に出掛けるなんて珍しい。

(でも、雪も降ってるし、寒いのに……大丈夫かな?)

こんなとき、連絡手段が無いのが悔しい。お母さんは舞がプレゼントした携帯を持ってるけど。

アパートのドアを開けて家に入れば、玄関から見える居間のテーブルに書き置きがあった。

『結婚式の相談で舞と出かけてきますので、夜は適当に食べてください。母より』

「……やっぱりそうか……うん、そうだよね……」

今日は土曜日だから、舞は仕事が休み。だけど、せめて朝言ってくれたって良かったのに。

でも、多分じゃない。舞の結婚で100%私は除け者だし、部外者だ。

妹の結婚式だけど……私は、出席どころかどこでいつやるのか、すら報せてもらえないだろう。

「うん……いつものことじゃない。私はいつも除け者……それがお似合いなんだから……」

せっかく、立花先生の言葉であたたかくなった心が冷えていく。
自分のドジで失った食費のぶんぜいたくはできないから、 ストーブも我慢して冷えたご飯に冷えたお茶をかけて食べた。

「うん……おいしい……うん……」

ズズッ、とご飯をすする音に紛れて鼻をすする。所詮、真っ暗な場所が私にはお似合いだ。

どんなに頑張っても……私にはここから出られないんだから。

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